一年の約束 〜セルジオからマリアへ その6〜
大好きなマリアへ
元気ですか?
僕はやっと16歳になりました。
僕の誕生日が過ぎると、春がくるような気がします。
はやく暖かくなって暑くなってそれから少し涼しくなって…マリアに、会えますように。
誕生日プレゼント、どうもありがとう。すごく嬉しかった。
しかも、持ってきて下さったのがマリアのお祖父様だなんて!
マリア、ひどいよ。前の手紙ではお祖父様が僕に会いたがってらっしゃるとは書いてあったけど、お祖父様に僕への誕生日プレゼントを託したなんて一言も………全く、本当にびっくりしました。
ああ、マリアが猫みたいな目をくるっとさせて、「私、嘘は言っておりませんわ」って言ってる姿が目に浮かぶ…やっぱりマリアにはかないません。僕は16歳になっても相変わらずです。
矍鑠とした、愉快なお祖父様だね。これから少しレストカの様子を見て、それからアイルーイに戻られるそうです。
…話がそれました。
誕生日プレゼントのマント。…どうして、僕が背が伸びて今までのが小さくなったって分かったのかな。すごく不思議です。そして、マリアが選んでくれたものが僕にぴったり合っているのも…とても不思議です。マリアは、魔術使えたんだっけ?
そうそう、背は伸びました。このまま行くと、ティレックには追いつけるかもしれません。シードルやハイトさんはもうなんていうか…「背が高い」というより、単純に「大柄」だから。
マリアと結婚したときには僕の方が小さかったけど、マリアに釣り合うようにこのまま伸びてくれればいいなあと思います。
それから、ハイトさんには「ここに来てから、面構えが変わった」って言われたんだけど、自分ではさっぱり分からない。どうなんだろうなあ?
誕生日に、フェルディオーレやシュレインがケーキを焼いてくれたり、ティレックが薔薇の花束(この真冬に冗談のような話ですが、本当です。ティレックとフェルディオーレだけが知っている秘密の場所には、この時期でも咲く薔薇があるんだって)をくれたり、ハイトさんやシードルが兵士達に呼びかけて祝宴を開いてくれたり(ごめん、僕はそこでしたたか酔っ払って、気がついたら床で料理の皿と酒瓶を抱いて寝ていました。正直に言うので許して下さい)、本当に色々あって、楽しい誕生日でした。
やっぱり、マリアに会いたくなったけどね。
マリアのお母様の手紙。
僕も考えてみたよ。
でもやっぱり、お母様のおっしゃる通りなような気もする。
マリアはとても頑張り屋さんで、父上にからかわれたりするから、少し息をぬいて遊んでみてもいいんじゃないかな。と思います。
あと、僕がマリアとの買い物を嫌がるだなんて、そんな余計な気をまわさないように。
…セステアに帰った時、僕が変な服を着るかどうかはまた別として。
では。誕生日プレゼント、本当にありがとう。
誕生日騒ぎの終わった、国境の砦にて。 セルジオ
P.S. マリアのお祖父様が、「妃殿下は、アイルーイにおられたときより断然輝いて見えました。クスコに嫁がれて本当によかった」と仰って下さっていたけど、本当だろうか。
だとしたら嬉しいけど、今マリアの側に僕がいるわけじゃないので、少し複雑な気分です。